Hide and Seek



「姫!」
千尋が天鳥船の回廊を歩いて堅庭へと向かおうと思った時のことだった。

布都彦が後ろから声をかけてきたのだった。

いつもなら大きな金色の瞳を輝かせているのだが、
今日はすこし伏せがちになっている。

「どうかしたの?」
千尋がたずねれば
「柊殿を見ませんでしたか?」
とのこと。



残念ながら千尋は柊の行方を知らなかったのだが、
いつも書庫にこもっている彼の姿を思い出し、
「書庫にはいなかったの?」
「はい。いつもこの時間なら、書庫か楼殿台にいらっしゃるのですが・・・」
今度の戦の事でお聞きしたいことがあったのに・・・とぼやく布都彦をみて
不謹慎ながら千尋は思ってしまった。

「布都彦って、柊の事好きなんだねぇ」


「え?」
あまりにも唐突だったので、布都彦は目を見開いて聞き返してしまった。
「うん、あのね。私が布都彦を見るときって、大概柊、那岐、忍人さんと一緒にいるか
柊を探してるかなんだもの」
「え、えぇっ?そ、そんなことは・・・」
「うん。そんなことないと思ってたけど。やっぱり多いんだよね。
布都彦と柊を見る回数。だから、好きなのかなーっておもって」
千尋のあっけらかんとした返答に、布都彦は顔面の温度が上がっていくのを感じた。


「わ、わたっ、わたしがっ、ひ、ひひひ、柊どののっ
す、すみません姫!失礼させていただきますっ!!」
リンゴよりも顔を真っ赤にさせた彼は大きな足音を立てて走っていってしまった。




「布都彦かわいいなぁ〜」
にこにこと笑いながら、千尋は堅庭へと足を運ぶ。


「あれ?柊」
庭の先客は先ほど布都彦の探し人に他ならなかった。


「なんで、こんな所に?」
柊の掌には既存伝承が散らばっている。
「いえ、たまには気分を変えてみようかと思いまして」
「へぇ・・・あ、布都彦が探してたよ」
「ふむ、そのようですね」
柊は遠くから聞こえる足音を聞くと、そそくさと片付けを始めた。


「行っちゃうの?探してたのに」
「探してるから、行っちゃうんですよ。我が君」
「?」
柊の言葉の意味が理解しきれず、首をかしげてその先を問う。


「ふふ、布都彦は私を追いかけ続ければいいんですよ」
そう言い残すと布都彦から逃れるために庭を出ていった。




「もう、なんなのかなぁ?」
その場には、一人柊の意味が分からず膨れる千尋がいた。













***オマケ***


忍「柊のやつ、布都彦が自分の気持ちに気付くまで逃げ続けるつもりだな」
風「はたからみたら、布都彦が柊の事が好きで追いかけているようにしかみえないからね」
那「むしろ、逆なのにね。はぁ。性質が悪い」
忍「まあ、柊だからな」
風「えぇ、柊ですから」
那「布都彦、御愁傷様」





***あとがき***
柊布ということで、こんな感じでよかったでしょうか?
柊をかっこよく書こうとおもったのですが、
彼はかっこよく書こうとすると、鬼畜になってしま・・・
こんな小説でよければ、もらってやって下さい。

鈴鐘 光

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