それは、気がつかないうちに砕けて。

そして見えない壁になってしまった。





ガラス





「みっかみせんぱーいっ!」

「ウゼエ、バカ」

「酷いっすよー先輩ー」

悪態をつきながらも、後から抱きついた俺をきちんと構ってくれる三上先輩。
そんな結構面倒見がいい三上先輩が俺は大好きだ。

でも、実は俺のことは唯の後輩としかみてないってのも知ってる。

「先輩、放課後時間あります?」

「お前部活あるだろうが」

キッパリ断られてしまった。
確かにありますけどね。

三上先輩は高校に入ってからサッカーを辞めてしまった。
むかない。
たったそれだけを残して。

あの背番号は今は同学年の水野が背負っていた。

でも、サッカーを辞めた今でも、サッカー部には顔をだしてくれてた。
三上先輩自身も顔見知りが何人もいるし。
俺もいるし、なんて自惚れだけど。
それから、高校にはいってから水野のことも吹っ切れたみたい。
ときどきアイツの相談にも乗ってる。
ま、中学からいた奴等とかの事聞いてるんだと思うけどさ。
それ以外のプライベートなことだったらちょっと怒っちゃうよ?




で、キッパリと断られた理由は多分部活が原因じゃない。







「それに、残念ながら一馬との先約があるんだよ」




そう、それ。
その言葉。

俺最近その名前口にもしたくなくなってきたよ。




真田一馬

って名前。

奴は中学の時に三上先輩に会って、あっという間に三上先輩の心を奪っていってしまった。

三上先輩のほかの人に対してはってるガラスのバリア。
三上先輩はいつも他の人とは一歩はなれたところにいた。
そこで、自分には一定距離以上近づかないようにバリアを貼ってたんだよ。
でも、真田はそれを至極簡単に破ってしまった。
真田特有の優しさで。
なんの躊躇いもなく、ぽんっと三上先輩と同じ視線に立ってしまったんだ。
俺らがそれにどれだけ苦労したかしらないくせに。

そうして真田は三上先輩のガラスのバリアを壊してしまった。




あぁ、違う。
そのガラスはまだ俺らに残ってる。
そう、きっとアイツはガラスを壊さずにするりと抜けてしまったんだ。

まるで、幽霊みたいに。
まるで望まれていたみたいに。








あぁ、なんかめちゃくちゃ悔しいな。
でも、ココで俺も好きですとか告白したって三上先輩が困っちゃうだけだから。
俺の世界は貴方が中心だから。






今はまだ、ちょっとだけウザくて懐っこい後輩でいてあげます。







+END+
というわけで藤代→三上ですね。
藤代を書こうとすると、やっぱりどうしても報われない方向に(笑)
いやー、なんででしょうね(苦笑




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