いつの間にだろう?

今までなかったはずの荊の檻。


この間までなかったのに、


前よりずっと大きい荊の檻。









高校になって、この武蔵森に来て2年。

そう2年目のとある日を境に、この先輩、三上亮は変わった。




図書室に本を返そうと思って足を運んだら
偶然見つけてしまった。


メガネをかけて、頬杖をついて、
落ちてゆく夕日をゆっくり、切なそうに見ている。


とても気丈な顔だけど、とても切なそうで
その瞳から今涙が流れてもおかしくないと思う。


俺はついその顔み見とれてしまっていて、
その場を動けなかった。

「なんだよ、水野」

三上から話しかけられて我に返った。

「い、いや唯本返しにきただけ」

「あっそ、じゃ返してとっとと、どっかいけよ」

三上は変わったと思う。

俺はそそくさと本を返却して図書室を出る。
帰り際にもう一度三上を見たけど、
アイツはまだ空を眺めていた。


図書室の扉を後でに閉めてほっと息をついた。


最近アイツの周りの空気が重い。

まるでナイフを突きつけられているかのように鋭い。




今までは確かに棘はあったけれど、
近寄れないものではなかったのに。







真田、真田一馬が死んでしまってから、
アイツは鋭さをました。

孤高の薔薇は群れをなして、
まるで自分の中には近寄らせないといいたげに
荊の檻になった。

斬っても斬っても、伸びる棘のつるにみんな諦めてしまった。


きっと、真田だけは、この荊を断ち切れるのだろうなぁなんて思った。

アイツは諦めが悪いし、根性があるから。
きっと、アイツがいたなら三上の棘はなかったんだろう
なんて、ありえない願望を抱いてみる。


+END+
てなわけで、留守番電話の続編
水野サイド
あぁ、こんな先輩と二人っきりになったら俺もいやですよ




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